こんにちは。久しぶりの更新になります。
さて、GW前後から、いわゆる日本型雇用の特色の一つ、終身雇用を巡って揺れています。
”「終身雇用難しい」トヨタ社長発言でパンドラの箱開くか”(日経ビジネス、2019年5月14日)
”経団連・中西会長 「終身雇用は制度疲労」改めて持論展開”(朝日新聞デジタル、2019年5月7日)
私はいわゆる日本的雇用体系をとっていたメガバンでキャリアをスタート、その後転職を繰り返して、現在は「終身雇用」とは無縁の世界にいます。私個人の意見としては脱・終身雇用が良いと思いますが、では脱・終身雇用となった場合に従業員の待遇がどうなるか、経験をシェアしておきたいと思います。
いくつか働いた会社に一つが野村ホールディングス。リーマン・ショック後、2018年10月にリーマン・ブラザーズのアジア、欧州・中東事業を買収したのに合わせ、人事制度を刷新。従来型の全域型・地域型社員と”外資系に似た高級の支払いを可能とする”「グローバル型社員」が並存する制度を導入しました。後者は「初任給が54.2万円」で話題になりましたので、ご記憶の方もいらっしゃると思います。
このグローバル型社員、現在は”総合職C型”と呼ばれていますが、「報酬体系は他の社員と同様、「基本給+賞与」だが、特に賞与のメリハリが大きい。実績次第で1億円プレーヤーとなることも可能。ただ、専門性を追求するため、一度G型になると他の部門へ移れない。投資銀行部門を選択すれば、ずっとそのまま。いわば片道切符である。「成績が悪ければ給料も激減するし、中心のポジションにいられない。要するにハイリスク・ハイリターン」(東洋経済ONLINE、2010年5月13日の記事、”野村ホールディングスが挑む大変革、”外資化”への試練”)という制度です。
制度刷新後に入社した私は、前職の給与に近い金額を実現させるためもあり、「グローバル型」で入社しました。前職が外資系金融機関であったため何の躊躇もなく「グローバル型」でオファーレターにサインしています。入社後知ったことですが、当時(今もそうかもしれませんが)、野村は従来型社員の「グローバル型」転換を推し進めており、定年間近の人は別として、20代若手から中高年社員に至るまで転換の勧奨が行われていました。いわゆるフロントではなく、管理部門であっても、です。
若い人は大きく年収が改善することもあり、転換に抵抗は少なかったようです。知る例では、当時28歳ぐらいの大卒女性で1,000万円近くの年収に達していました。私自身、同格の30代後半の社員に比べても、少なくとも3割は割高(笑)な給料だったと思います。
一方で、中高年社員となると、旧制度の年収体系でも高額の年収を貰っており、他部門に移動できる機会が無くなるグローバル型に転換するインセンティブを欠いていました(それでも、強力なプレッシャーにより転換を決断する人が殆どでした)。私の知っている管理部門の範囲では、いわゆる”切られた”例は聞きませんし、、また、グローバル型社員であっても他部門に転出(転出先部門がグローバル型を採用していることが必要、という制約がありますが)したり、定年後に再雇用されたり、懸念されたリスクが顕在化することは無かったと思います。
SNSでは豊田社長や中西会長の発言を巡り様々な反応がありますが、大手企業で終身雇用型社員と外資的なジョブ型社員が大規模に並存した例として、野村ホールディングスの事例を調べておくのは価値があるのでは無いか、と考えています。